ロマンか迷信か。

オーディオショップに真空管を見に行ったけど、12AU7の型番は在庫がなかったという話の続き。あの日の夜にお店で撮らせてもらった真空管の棚の写真を解析したところ、MAZDAのECC82と東芝の5814Aが写っていることを確認。1週間後に再訪して無事に両方とも確保いたしました。

お値段は1本4,000円弱

初段はNFB無し

ぼくが使っているのはユニゾンリサーチのSimply Italyという真空管アンプ。回路はEL34のシングルで整流は半導体ダイオード。電圧増幅の初段はフィードバック無しというのが特徴で、個々の真空管が持つ歪み等々の個性を残すような設計になっている。この電圧増幅の真空管(12AU7)を交換して、巷で言われているように音が変わるのかどうかを確かめたい。出力管のEL34は標準(TUNG-SOL)のまま。

左がTUNG-SOL(約4,000円)で右がGold Lion(約8,000円)

Simply Italyに標準でついてきたのがTUNG-SOLの12AU7Wで、その後Gold Lion(Genalex)の12AU7に交換して現在に至る。このふたつは脚が金メッキかどうかくらいしか違いがなくて音も全く同じ。見た目が同じだから同じ音に聴こえるという話もある(笑) 両方ともロシアで現在製造されている「現行管」。12AU7は2組の電極を収めた双三極管だから、1本で左右チャンネルの増幅もできるし、Simply Italyでは2段階の増幅をするように使われている(と思う)。

型番が数字4桁のやつ

日本製はきれいに作られている
梱包も厳重

東芝の5814Aは12AU7の高信頼管だからそのまま差し替えOK。高信頼管というのは業務用ってことで、特に音がいいとかそういうことではないと思うけど、どちらか選べって言われたら高信頼管を選んでしまう(笑) 箱を開けてみると脚には発泡スチロールのカバーがついていたりして、なるほど高信頼じゃねーの。

左がグレープレートで右がブラックプレート

これがさー、写真撮ってたら1本は中のプレートが黒なのにもう1本はグレーなことに気がついてびっくり仰天。ステレオで左右1本ずつ使うからこれはダメでしょってことで、交換してもらいに片道1時間(渋滞含む)をもう1往復することに。グッタリだぜー。

TUNG-SOLに比べると細い

差し替えて電源ON。ヒーターの明かりが見えて非常によい。発熱は多いかも? で、音はどうなのか…んー、Gold Lionに比べるとマイルドで、その分厚みがあるというか濃く感じる。ずっと聴いていても不快感はなくて十分なクオリティー。若干のヌケの悪さが気になるかも。可もなく不可もなくという感じかなー。使用時間の増加とともに変わってくるところもあるでしょう。

詳細不明のMAZDA

ロングプレートなのかな?

もうひとつはMAZDAのECC82。ECC82というのは12AU7のヨーロッパ名。問題はMAZDAという部分で、当然ながら自動車メーカーとは全く関係なく、カタカナのマツダだと東芝の旧ブランドみたいな話で、それ以外ではフランスのメーカーという情報を見た。 開封してみると「MADE IN ENGLAND」のスクリーン印刷が。イギリス製…大丈夫かな?(笑)

BVAは「British Valve Association (英国真空管協会)」とのこと

東芝の5814Aに続いてアンプにセット。これもヒーターの明かりがよく見えるタイプで、もうこれだけで満足。音は中高域に独特の個性があるような感じで華やか。低音が出すぎるくらい出る代わりに中域が薄いのかもしれない。全体的にはスッキリ目かな。5814Aが本命だったけど、こっちの方がいいじゃん、と今は思っている。

もう惑わされない!

(1) 音の違いは本当にわずか
上で音の印象を書いたけれど、客観的に見れば本当にわずかな違いしかなくて、差し替えたことを知らなければ気がつかないかもしれない。聴き慣れた音楽なら違いがわかるかなー、くらいの話。ということは、みんなが欲しがる有名なやつ(=高額)を買ってもあんまり意味なさそうだね。とは言え、故障続きでアレだったSimply Italyが鮮度を取り戻した。

(2) 高信頼管・ビンテージ管・NOS管だから音がいいとは限らない
高信頼管はやっぱり音質に影響するようなスペックではなさそう。そもそも大半の真空管はオーディオ専用ではないわけで。今回の2種類はNOS管(ニュー・オールド・ストック=現役時代に生産されたものの未使用品)と呼ばれるものだけど、現行管のGold Lion 12AU7の方がワイドでクリアな音がする。これを現代的と捉えてNOS管の音を味とか個性というならばそれはそれで納得できるけれど。

(3) 先入観を排除できない
インターネッチョには「〇〇というメーカーの真空管の音がいい」みたいな話があふれているから、そういう先入観で選ばないように、いつものオーディオショップにある在庫という縁をたどってみた。それでもやっぱり「高信頼管の方が」「ブラックプレートの方が」みたいな先入観を排除できない。結局のところ「変わると思って聴くか変わらないと思って聴くか」というのがオーディオの大きな部分を占めているんでしょうなぁ。

(4) 玉ころがしするなら自作系のアンプで
こういう真空管を差し替えてなんちゃらとかやるなら、キットでいいから自分でハンダ付けして、もっともっと前の段階から理解していないと本当の面白さというのか楽しさがわからないと思った。


EL34もNOS管に交換した。

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